CUSTOMERお客様のご紹介

美意識の原点

株式会社永楽町スエヒロ本店 代表取締役 三宅一郎様

「明治43年(1910年)大阪の北新地にて洋食レストラン弘得社(こうとくしゃ)として創業。その後、炭火で焼き、醤油とメンドテ-ルバタ-を掛けるスエヒロスタイルのステ-キを主とした牛肉専門店として営業し、昭和27年 先代店主三宅忠一により “しゃぶしゃぶ” を考案して以来世界的にスエヒロの名を広めてまいりました。」(公式HPより)

しゃぶしゃぶの由来

当時お店の入口が小さく奥が広い(末広がり)のお店だったこと、創業者の上島歳末(としまつ)の名前の末の字を取って「スエヒロ」と命名したそうです。

最初はビフテキとすきやきのお店からスタート。戦後間もない時期、祖父が大陸から持ち帰った鍋をつかった料理を何かできないかと考えた結果、栄養価の高い牛肉とゴマだれの料理として「しゃぶしゃぶ」が誕生しました。

しゃぶしゃぶの語源はなんだかご存じですか?お湯の中にお肉をくぐらせる様子から連想されたと多くの方は思いますよね。実はおしぼりを「じゃぶじゃぶ」洗っているところからヒントを得たそう。さらに関西人はなにかとオノマトペが好き。「この道をがーっと行ってしゅっと曲がったら突き当りにどーんとあります」みたいな(笑)ということで、その鍋料理はじゃぶじゃぶの濁音をとって最終的に「しゃぶしゃぶ」と名付けられたそうです。

しゃぶしゃぶを昭和27年に始めて、昭和34年には「しゃぶしゃぶ」の名前はもはや一般的になっており商標が取れなかったそう。たった6年の間に一気に人気料理になり全国に広まっていったことうかがえますね。ちなみに「豚(とん)しゃぶ」は永楽町スエヒロ本店の商標だそうです。

経営とは白鳥のようなもの

今から約15年前、40代半ばで社長職を引き継いだ三宅様。会社を引き継いだ時は余裕がなく必死だったといいます。私は就職氷河期の人間なのでよくわかりますが、2000年代は不景気真っ只中で、北新地の景気も冷え込んでいたことは容易に想像ができます。

他人からは「あんな一等地に自社ビルがあっていいね。悠々自適だね」と言われるそうですが、全くそんなことはなく湖の白鳥のようなものだと。優雅に見えて水の中では必死に足を動かしている。かつては大阪で最も地価が高い場所になったこともある北新地の入り口。そんな北新地のランドマークのようなビルを建て替えることに非常に葛藤があったといいます。自分には想像もできませんが、歴史あるお店を引き継ぎ、経営するのは大変な重責に違いないと感じました。

「飲食店はただ食事を提供するだけではない。空間、サービスなどトータルの価値。そしてその価値を提供するためには世の中のこと、地域のことをよく知らないといけない」4代続けて通って下さるお客様もいらっしゃる歴史あるお店。生半可なことはお客様が許して下さらないと言います。そのようにたまには叱咤激励されながらお客様に長年愛されているからこそ、今も名店として続いているのだなあと思いました。

ラクな経営などない

船場ビスポークには様々なお客様がいらっしゃいまして、経営者の方も多いです。2代目、3代目、4代目の社長様もおられれば、自分で事業を興した若い経営者の方もおられます。お話を聞いていて思いますが、楽な事業などひとつもありません。引き継いだ社長様も、自分で起業した社長様も、それぞれに違う苦労があり、ずっと挑戦と努力を続けていらっしゃいます。当たり前のようですが、人は隣の芝生がよく見えるもの。自分の持っていないものをうらやむのではなく、自分の持っているものを磨いて挑戦を続けるしかないのだと感じました。

ファッションのこだわり

いつお会いしても清潔感があってお洒落な三宅様。基本的にイタリアものが好きだそう。こてこてしたものでなくさりげない。シンプルだけど洗練されている。そういうお洒落が好きだと言います。

原点は高校時代にとてもカッコいいディーゼルのジャンパーと出会ったこと。当時の日本では見たことがないようなお洒落なデザインだったそうで、大学時代はミナミのディスコに通い、イタリアのインポートショップのウィンドウを覗く毎日。学生がとても買えるような値段ではなかったけれど憧れがあったといいます。

私はそういう経験は一生の宝だと思っています。私自身、大学時代に週末ごとに南船場や堀江のセレクトショップや古着屋さんに通い、新卒でアパレルメーカーに勤めた経験が今の仕事のベースになっているのは間違いありません。「美意識」や「センス」というのは大切なポータブルスキル。それは生まれ持ったものではなく経験値です。そして一度染み込んだセンスは自転車の乗り方のようなもので、いくつになっても失うことはありません。乗らないとちょっと下手くそになりますが、何度か乗っているとカンが戻るところも似ています。時代に応じて多少アップデートしていく必要はありますが、自分の中の美意識を持つことは非常に重要だと思っています。私が船場ビスポークを通じてお伝えしたいのはそういう「美意識」なのだと思います。

三宅様、この度はステキなスーツをオーダー頂き、そしてまた貴重なお話をたくさん聞かせて頂きありがとうございました。

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